プロフェッショナル 仕事の流儀 〜製紙原料〜

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お初にお目にかかります!印青連の中でも異色の団体、東京都製紙原料共同組合、通称“製紙原料”所属の事業副委員長、新井と申します。

まず製紙原料といってもピンと来ない方が大半だと思いますが、平たく言うと“紙のリサイクル”です。

製紙原料とは文字通り紙の原料で、古紙とパルプの2種類しかありません。新聞、雑誌、段ボール、トイレットペーパーなど世の中には様々な種類の紙が存在しますが、基本的には古紙とパルプで作られています。我々はそのうちの古紙を扱うエキスパートということになります。

段ボール古紙を圧縮した古紙製品

パルプとは伐採された木材を加工したもので、主にカナダやブラジルなど森林資源が豊富な地域で、住宅用等の木材を切り出した際の端材を木材チップとしてコンテナ船で運んできて、薬品で溶かして製造します。

古紙とは様々な企業の工場、店舗などの現場や、各家庭から資源ごみ排出されるあらゆる紙、つまり一度市中に出回った紙製品のことを言います。

製紙メーカーは製造する紙製品の要件に合わせてこれらの原料を組み合わせて使用します。

例えば日本の段ボールはほぼ100%古紙から作られていますが、海外での輸送に使われる段ボールの場合、より繊維強度のあるバージン木材由来のパルプが使用されます。海外ではまだ未舗装の道路が多く、段ボールの強度が弱いと中の製品が傷ついてしまうことがあるからです。

印刷用紙でも、求められるインクの乗りや白色度等を実現するため、使用する原料や添加する薬剤を細かく調整しています。

 

このように一口に段ボールや印刷用紙といっても様々な種類があり、これだけで一冊の本が書けるほどディープな世界なのですが、ここでは割愛し我々が扱う古紙について主に紹介したいと思います。

 

古紙は様々な場所で日々発生するので、我々はルートを組んでパッカー車や平ボディ車で毎日回収に回っています。あらゆる場所に対応するため、小回りの効く4t車を使うことが多いです。

ちなみにアメリカなどは国土がデカく道も広いので、輸送効率を高めるため大型の回収車が用いられています。

回収してきた段ボールを降ろすパッカー車

 

こうして回収してきた古紙を事業所に持ち帰ると、このようなベーラーという古紙専用圧縮機で約1トンの塊にし、この時点で製紙原料として売り物となります。その際、段ボールは段ボール、新聞は新聞といった具合に、古紙の種類ごとにまとめるため選別作業をします。これには、ビニールや金属等の不純物を取り除く作業も含まれます。

古紙圧縮機(ベーラー)100tの油圧で圧縮します!

雑誌の選別風景。ビニール紐や汚れた紙は厄介ものです。。。

 

ここで、おそらく皆さんが最も気になるであろう、なぜ分別するのか、どこまで分別したらいいのか、という点について少し説明いたします。

 

例外はありますが基本的に古紙の値段、つまり原料としての質・価値は繊維の質と均質さ(歩留まり)によって決まります。要はどれだけパルプに近い状態か、という点が重要なのです。できる限り同じ由来の素材で不純物の無い状態であれば、使う時に問題が起きづらいからです。

白色度の高い古紙は「上物」と呼ばれ、一般的に価値が高い。

 

古紙は使用時に巨大な洗濯機のようなマシンで大量の水で繊維の状態まで戻され、その際ビニールやクリップ、シールその他の不純物はほぼ取り除かれます。極端な話、まったく選別をしない紙や特殊な加工が施された紙であっても、原料として使用することは可能です。しかし、そういった不純物がごみとして出てきてしまうため、製紙メーカーにとっては歩留まりが悪く、あまり価値を生まない原料ということになります。

 

紙製品がじゃんじゃん売れて、原料が足りん!もっと持ってこーい!という時期ならばいざ知らず、製品が売れなかったり古紙の発生量が需要量よりも多かったりすると、そういった質が悪く価値の低い原料なんかいりません、あっちの綺麗なやつを買いますから、ということになってしまいます(この辺りについてのメーカーとの駆け引きにも色々あり、それだけで一晩語れてしまうのですが、割愛します笑)

そうなると、そういった不純物や歩留まりの悪い紙というのは、古紙屋の方で頑張って取り除くか、そもそも排出時点ではじいてしまうか、しか無くなってきます。

結局、誰かが分別をしなければならないのです。

 

先ごろ話題となった中国のプラスチックスクラップ輸入禁止措置も、中国の方でとにかく何でもかんでも輸入して、人海戦術でごみを取り除いていたのがエスカレートし、輸出側もごみでも何でも入れてしまえ、というのが不法投棄の原因となり、国家規模の大問題を引き起こしたのです。

 

我々古紙屋は分別も仕事のうちですが、あまりに何でもいいやで混ぜこぜの状態で出されてしまうと、ある日限界が来て、もう続けられません、ということになる可能性があります。そうなると困ってしまうのは排出元様であり、結果として廃棄物の処分費が嵩んだり環境負荷の増加を招いてしまいます。それを防ぐためにも、我々はそれぞれの状況にマッチしたベストな分別方法を提示する責任があります。また、その分別方法も排出物の種類、量、場所、市況によって変化するため、排出元様とコミュニケーションを密にして、理解と信頼を得ていく必要があります。

 

現状、最も環境負荷を抑えることのできるリサイクル方法とは、排出時点で分別することです。しかし、あまりに細かく分別しすぎても作業コスト、回収コストが嵩んでしまい、トータルで考えると分別の意味が無くなってしまう場合もあります。理想的には、排出する人それぞれがリサイクルのプロセスを理解していることです。しかしこれだけ様々な素材の製品で溢れ、次々に新しいモノが生み出されている現代社会ではそれは現実的ではないでしょう。

 

そこで我々がこれから目指すべきは、製品の廃棄・リサイクルまで考えた製品デザインをしていくこと。捨てない社会を創り上げていくことです。そのためには、どのような製品が環境負荷を低減させることができるのか、製品が作られてからリサイクルされるまで、どのような回収モデルが最も効率が良いのか、ということについて、我々リサイクル現場からの情報発信というのが必要だと考えています。

 

そんなわけで今後も機会を見つけて、様々なリサイクル事情を紹介していきたいと思います。少しでも興味を持っていただければ幸いです!


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